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WeChatはどのようにしてAlipayの最大のライバルとなったか

2017.08.25
Category: 翻訳記事
執筆者/編集担当者: nakajima


 

はじめに

 
中国では、ハイテク企業が特定の産業に影響を
及ぼす傾向があります。
Alibabaはeコマース業界で
その名をほしいままにし、
一方、Tencentはソーシャルネットワークや
ゲーム業界を牽引しています。
 
しかし、彼らの“帝国”が強大になるにつれて、
この両者が競合することは避けられないのです。
 
その中でも、モバイル決済は両社が
競合する分野の1つです。
このマーケットは収益性、成長率ともに非常に
高いものとなっており、2016年の第4四半期で、
前年比200%以上の成長を遂げ、
1816億USドルを計上しました。
 
特に中国でのモバイル決済は、
オンラインセールスの半分以上が
スマートフォンを通じて行われますが、
これによって多くの消費者データへの
アプローチが可能になるのです。
 
 

Alipayが先行

 
Alibabaの金融関連会社である
Ant Financialは、Alipayで
モバイル決済市場を長らく支配してきました。
Alipayは、2009年に最も早く
モバイル決済ソリューションサービスを
市場に投入しました。
2013年第3四半期から、5期連続で
市場シェア約80%を誇っていましたが、
そのシェアは徐々に減ってきています。
 
 

WeChat PayがAlipayの最大の競合相手

 
「WeChatは多くのユーザーが利用し、
またその知名度が高いために、
WeChat PayはAlipayの最大の競合になった」
とResearch Pysboのファイナンシャルアナリスト、
Wang Pengbo氏はTech in Asiaに語りました。
 
2013年にサービスが開始された
WeChat Payによって、
中国のソーシャルメッセージングアプリ
“WeChat”上でも
決済ができるようになったのです。
 
先月、Analysysは2016年第4四半期の
中国のモバイル決済市場に関する
レポートを発表しましたが、
Alipayのシェアは54.7%、
それに続いて
WeChat Payを含むTenpayは約37%でした。
 
Alipayは、マーケットシェアに直接的に
影響を及ぼす取引額が増加しましたが、
一方、Tenpayはアクティブユーザー数が
約2倍になりました。
 
WeChat Payは
ソーシャルペイメントとオフライン小売という
2つの主要分野を
どのように倍増させたのでしょうか?
 
 
 

ステップ1:お年玉(紅包)

 
eコマースがAlipayのコアビジネスを
支えているのであれば、
WeChat Payは
ソーシャルネットワーキングを通じて
その利用がどんどん増えていくと考えられます。
 
特に、WeChat Payは
中国の伝統的なお年玉(紅包)をきっかけに
大成功を収めました。
 
Tencentによれば、WeChat上で
お年玉(紅包)を送れるサービスを開始し、
29ドルまで送金できるようにすると、
2014年の大晦日には
お年玉(紅包)が約1600万本交換され、
その1年後には、
その数は10億に急増したのです。
 
 

お年玉(紅包)機能誕生のいきさつ

 
「WeChatのお年玉(紅包)機能は、
Tencentの企業風習と広東省の広範な伝統に
起源があります。
 
その風習とは、会社の管理職が、
新年の休暇の後、最初の就業日に
従業員に少額の現金を添えたお年玉(紅包)を
あげたことから始まっています。」
 
とChina Tech Insights
(Tencentの内部調査機関)
と共同で書かれたWeChatのブログに
書かれていました。
 
「会社が拡大して部下が増えるにつれて、
管理職の中には
非常に多くのお年玉(紅包)をあげる
このような風習に疲弊する人も多くなりました。
そこで、この問題を技術的に解決できないかと
試行錯誤しました。
 
それが、後々のWeChatにおける
お年玉(紅包)機能の原型になるとは、
誰も思いもしませんでした。」
 
 

Alipayに与えた影響

 
Jack MaはこれをAlipayへの
“真珠湾攻撃”と呼びました。
 
その後、AlipayはWebchatと同様の
お年玉(紅包)サービスを開始しました。
 

現在中国では、新年になると
この2社の熾烈な競争が繰り広げられ、
両社とも無料のお年玉(紅包)や
クーポンを出すなど、
さまざまな戦術を組み合わせて
新規ユーザーの獲得に乗り出しています。
 
今年、Alipayは、
アプリに拡張現実(AR)機能を利用し
ユーザーがポケモン・ゴーの中で
お年玉(紅包)を獲得できるようにしました。
 
しかしAlipayにとっては時すでに遅く、
その損失はすでに甚大にものとなっていました。
一方で、お年玉(紅包)機能のおかげで、
WeChat Payは短時間で
ユーザー基盤の大幅な拡大に成功しました。
 
2014年末までに、1億人以上のユーザーが
WeChat Payと、
QQ(同じくTencentが運営する別のサービス)
の支払いシステムであるQQ Walletの
銀行口座を連結したのです。
 
WeChat Payを使ってお年玉(紅包)を送ることは、
今や誰もがあたりまえのように利用し、
WeChatのユーザー間で
送金のやり取りがなされています。
 
Tencentの社内データ調査チームの
Penguin Intelligenceによれば、
1月の調査対象ユーザーの87.8%が
お年玉(紅包)の送金に「WeChat Pay」を使い、
それに続いて
63%がP2Pを使ったといっています。
 
AlipayもWeChat Payも、
ユーザー間のお年玉(紅包)交換を含む
P2P送金は大きな収入源にならない
ということを確信していました。
 
しかし、WeChatにとって、
ユーザー間の決済は
初期のユーザー基盤を確立するために
重要な第一歩でした。
 
Alipayとは異なり、WeChatは、
ユーザー獲得のために屋台骨となる
eコマースビジネスを持っていません。
 
しかしながら、何百万人ものユーザーが
モバイル決済に一旦サインアップし
使用するようになると、
そのユーザー達を
現在WeChat Payが提供する
オンラインサービスへ
取り込めるようになったのです。
 
 
 

ステップ2:点を結んで線にすること

 
タイミングは完璧でした。
2015年には、
ライドシェアリング、フードデリバリー、
映画チケットなど、中国のO2O市場が
爆発的に増加しました。
そしてTencentとAlibabaの両社が
積極的にこの分野への投資を行いました。
 
 

オンラインサービスへの投資の実例

 
Alibabaは
スタートアップ企業のMeituan(美团)を支援し、
TencentはDianping(点评)に投資しましたが、
2015年末にはこの2つの新興企業が合併して、
TencentとAlibabaをステークホルダーとした
Meituan-Dianping(美团点评)となりました。
 
その年、Tencentはフードデリバリーの
スタートアップ企業Ele.me(饿了么)に
2件の投資を行い、
AlibabaとAnt Financialは
Alipay経由でアクセス可能な
ローカルサービスのポータルKoubei(口碑)を
共同出資で構築しました。
 
「Alipayの影響力は非常に強いです。
なぜならAlibabaは直接株式を持っているか、
または
これらの企業を直接保有しているからです」
とPengbo氏は説明します。
 
「また実際には、
たくさんのユーザデータも掌握できます。
決済をさせることは第一歩でしかないのです。」
とも彼は付け加えました。
 
つまり、さまざまなサービス・機能を追加できるし、
また取引状況など
消費者行動のデータの抽出が可能なのです。
 
Dianping(点评)のモバイルアプリでは、
Alipayではなく、WeChat Payの
支払いオプション機能がついています。
 
しかしWeChat Payは
Alipayと同じ軌跡をたどっていました。
Tencentの投資企業であるDianping、Meituan、
およびDidi(滴滴)は、
ソーシャルメッセージングアプリの機能を備え、
またモバイル決済へのリンクもついています。
さらに、Dianping独自のモバイルアプリでは、
AlipayではなくWeChat Payの
機能がついています。
 
Ant Financialは
これについてのコメントを拒否しました。
「主な理由は
AlipayがKoubeiを所有しているからです」
と、Meituan-Dianpingの広報担当者はAlipayの
ローカルサービス向けの
アプリ内ポータルを参照して、
Tech in Asiaに語っています。
 
「KoubeiはDianpingの競合なのです。」
昨年、AlibabaはMeituan-Dianpingに
出資をしましたが、
フードデリバリーアプリのEle.meには
12億5,000万USドルを投じました。
このアプリではモイル決済として
まずAlipayを選択させるのです。
 
TencentとAlibabaの狙いはともに
同じ企業に投資し、
その決済ビジネスを手中に収め、
そしてそれらから獲得できるあらゆるデータを
支配したかったのかもしれません。
 
今日、AlipayとWeChatの両方には、
ライドヘイリング
(DidiはAlipay内でも利用可能)、
公共料金の支払い、
プリペイド式の電話サービス、
映画や電車のチケットの購入など、
無数のオンライン・サービスが
アプリに組み込まれています。
 
彼らはエコシステムを形成して、
eコマース、ゲーム、ソーシャルの
各コアビジネスを超えて、
決済ソリューションを基盤とした
オンライン・サービスに変わりつつあります。
 
 

WeChatにとって有利な点

 
WeChatは中国で携帯電話に費やす時間の
35%を占めている今、Alipayよりも
WeChatのほうがソーシャル上、優位に立っている
ことは強調すべき事柄でしょう。
 
WeChatのコンサルティング・リサーチ会社
China Channelが3月に発表したレポートによれば、
WeChatは中国で携帯電話に費やす時間の
35%を占めています。これはAlipayよりも
WeChatの方がユーザーの利用時間が長く、
さらにWeChatはそのO2Oサービスを通じて
ユーザーをより消費行動へと
導けることを示しています。
 
昨年行われた
コンサルティング会社McKinseyの
調査によれば、
WeChatを通じてショッピングをした
ユーザーの数は31%で、
2015年の2倍になりました。
 
「Alipayはソーシャル的な要素、
つまり個人や消費者というデータを
持っていません」
 
とアジアの金融業界の
リサーチ&コンサルタント会社Kapronasiaの
ディレクター Zennon Kapronは、
Tech in Asiaに語っています。
 
「まさにそれが、TencentがAlipayよりも
優位に立っている点なのです。
それが今後
ますます重要になるだろうと私は思います」
 
そしてこのことは、
お年玉(紅包)の場合と同様に、
AlipayがWeChatに追随しなければならない
要因となったのです。
 
Alipayは2015年に、
ユーザーがお互いにメッセージを
送信できるようにするため、
アプリに「友だち」機能を追加しました。
 

去年11月には、
ユーザー同士が写真やメッセージを
グループで共有できる
インスタグラムのような機能をもった
「サークル」も追加しました。
しかし、それはすぐに論争の的となりました。
 
女性だけが写真を投稿できるという
ある特定の「サークル」内で、実は
あらゆるユーザーがチップを払うことにより、
投稿されたわいせつな画像を閲覧できる
ということが分かったのです。
 
その後、Alipayは
公序良俗に反するコンテンツを
厳重に取り締まり、
「サークル」機能のテストを
継続して監視するよう
言及しました。
 
 
 

ステップ3:オフラインの拡大

 
WeChat PayとAlipayの
最新かつ継続的な戦いの場は
店舗、レストランや
その他多数のオフラインサービスへと
移行していきます。
 
WeChat内にブランドアカウントを持つ企業や
O2Oサービスとは異なり、これらのビジネスは
アプリ内のシステムに留まらないのです。
 
 

補助金キャンペーン

 
「中国の内陸部には数十万の商人がいます」
とZennon氏は述べています。
「これらの商人はこのオンラインビジネスにおいて
依然として高いポテンシャルを秘め、
また金のなる木として大きく期待されています。」
 
昨年、Ant FinancialとTencentの両社は、
実際の店舗に
WeChat PayとAlipayを採用してもらうために、
第三者の開発者やサービスプロバイダーに
インセンティブを与える
「春雨プラン」と「メティオプラン」と呼ばれる
寛大な補助金プログラムを発表しました。
 
WeChatは昨年4月にそのプランを発表し、
1,450万USドルの補助金を拠出しました。
一方、それに続いて
Alipayの「春雨プラン」は、
2016年8月に
3年間で1億5000万USドルの補助金を
約束したのです。
 
 

ミニプログラムの開発

 
実際の小売り店舗では、
Lakalaが提供するような
QRコードまたはPOSスキャナーの
いずれかを使用して決済できることは
至極当たり前なことです。
1月にWeChatは、
以下のミニプログラムを組み込みました。
 
たとえば、次に到着する近くのバスを
ユーザーに知らせるバススケジュール専用の
ミニプログラムがあります。
 
Tencentによると、
サービスインをして2ヶ月後には
160,000人以上のユーザーが
このミニプログラムを利用しているとのことです。
 
ミニプログラムによって、
WeChatはより多くのビジネスを結びつけ
エコシステムを形成し、
それを拡張することができました。
それによりWeChat Payもまた
その恩恵を受けることができました。
 
Ant Financialの広報担当者によると、
Alipayもまた独自のミニプログラムを
開発していると言います。
しかし、そのミニプログラムの特徴や
ユーザーの体験方法の詳細は
まだ明らかにされていません。
 
 
 

勝利の不確実性

 
確かに、Alipayは依然として
中国のモバイル決済市場のリーダーです。
同社によると、現在、
月間アクティブユーザー数は
4億5000万人に上っています。
 
昨年の光棍節(11月11日、別名:独身の日)は、
中国最大のショッピング休暇となり、
Alipayは1日で10億件の取引を記録しました。
 
Alibabaの光棍節の背後にある
クラウドコンピューティング・マジック、
さらに、マネー・マーケット・ファンドである
Yu’e Bao(余額宝)のように、
Ant Financialは、Alipayの
さまざまな金融サービスを提供しています。
 
Kapronasiaと
非営利団体のBetter Than Cash Allianceが
共同で作成した報告書によると、
Yu’e Bao(余額宝)の
2013年の管理資産は2,900万USドルで、
その3年後には
1,52億人以上の顧客を保有するまでに
成長したのです。
 
また、Sesame Creditという
独自の与信システムも備えており、
ユーザーの購買や習慣によって
信用度の評価も
計測できるようになったのです。
 
「Alibabaは
完全なエコシステムを形成しています。
私たちは誰しもAlibabaを
見くびってはいけないのです。」
と、ECサイト”Taobao”と”Tmall”の
サイト上での店舗や、ビジネスを展開する
中国のハイテク企業を例にとりながら
Pengboは話しています。
 
Alibabaにはクラウドコンピューティング
「Alibaba Cloud」もあり、国内外のクライアントに
さまざまなクラウドサービスを提供しています。
「社長のJack Maが何か実現したいと思うなら、
おそらく5~10年をかけて実現するでしょう。」と、
短期的な利益ではなく
長期的にゲームを支配すること
こそが重要であると強調しています。
 
今後は、両社のモバイル決済システムの
海外展開競争が
ますます激化する可能性があります。
 
 

海外への投資状況

 
TencentとAlibabaはともに、
国際的なスタートアップ企業、
にアジアの近隣諸国のベンチャーに
多額の投資を行っています。
 
昨日、Ant Financialは、
東南アジア最大のオンラインショッピング
および販売市場であるLazadaの
決済ソリューションを提供する
HelloPay Groupとの合併を発表しました。
 
昨年、アリババは東南アジアのEC会社に
10億USドル出資して買収しました。
 
Ant Financialもまた、
インドの決済会社であるPaytmと、
フィリピンの金融サービス会社であるMyntの
株式を保有しています。
 
ちょうど数日前に、Ant Financialはまた、
米国に拠点を置く送金会社である
Moneygramの入札に対して
12億USドルまで引き上げました。
 
Tencentの海外進出は決済ビジネスを中心に
ずっと躍動を続けてきました。
今月初め、中国のハイテク企業は、
eBayとマイクロソフト社とともに
インドのEC会社Flipkartへ
14億USドルの投資ラウンドへ参加しました。
また、Tencentは
インドのヘルスケアのスタートアップ企業
Practoのリードインベスターでもあります。
 
中国のハイテク企業はタイでも活動しており、
タイ最大の電子書籍プロバイダである
Ookbee社と合弁企業を形成しています。
 
今年の初めに、同社はまた、
100%子会社のオンラインWebポータルSanookを
Tencent Thailandにブランド変更しました。
 
中国のモバイル決済市場が飽和し続ける中、
近隣のマーケットはWeChat PayとAlipayにとって
新しいチャレンジングな環境となります。
 
特に、成長の一途をたどっている
eコマース、フィンテック、
およびデジタルメディアのオンラインサービスは
新しいビジネスチャンスとなりえるのです。
 
両方の企業にとって、
それらの機会を最初に制することができるか
が重要になります。
 
 
 

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参考記事はこちら
How WeChat Pay became Alipay’s largest rival

「この記事はtechinasia.comの許諾を得て編集/翻訳(抄訳)/執筆しています。」

 

・本記事は情報提供を目的として株式会社アサツーディ・ケイ
 (以下「弊社」といいます。)
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